能登予備調査

能登半島で予備調査を実施しました。


最近でこそ、地方創生、過疎問題は日本のいろいろな場所で議論されるようになりましたが、能登半島はその先進地域のひとつだと思います。かつては北前船の寄港地として、また第一次産業の適地として栄えた歴史があります。しかし、近年の都市を中心とした経済システムのなかでは、人口減少地域になるのはしかたないかもしれません。

集落景観の美しさが印象的でした。砂地ではサツマイモやイチジクなどが育てられていましたが、海岸沿いから山の方へ移動すると徐々に水田が増えていきます。(写真:木部)

人類生態学の視点から考えた場合、能登半島にはみっつの興味深いテーマが考えられます。

ひとつは、豊かな自然と在来知が維持されているため、かつての日本列島に存在した自然への適応システムを考えるため手掛かりとなるデータが収集できるかもしれないことです。広葉樹林の利用、水田周辺環境の利用、沿岸海洋の利用などにおける在来知の役割を調査するのはおもしろいと思います。

このときは海がとても穏やかでした。(写真:木部)

ふたつめは、人類がはじめて経験するポスト人口転換の先進地域として、その多様な対処策の事例を観察できる可能性があることです。行政などを主体とする地方創生・過疎対策のありかた、住民が主体となった社会組織の変容など、どのような創意工夫によって対処が行われているでしょうか。

さらに、調査の背景として重要なことは、世界農業遺産に指定されたことが、能登半島にお住いの人々の意識に影響を与え、外部からの関与にも影響を与えた可能性があるということでしょう。

さまざまな研究者がすぐれた調査報告をしている地域でもあり、人類生態学ならではの成果を目指していきたいと思います。

(文責:梅﨑)

全国ニュースでも紹介されたイカのモニュメント(写真:水野)