長崎県小値賀町で調査を実施しました。
長崎県小値賀町の住民の皆さまにご協力いただき、アンケート調査、生体試料の採取、聞き取り調査を実施しました。お力添えいただいた全ての方に、心から感謝申し上げます。小値賀町は、長崎県五島列島北部の小値賀島とその周辺の島々からなります。人口は2000人程度で、その半数以上が高齢者です。アクセスは佐世保からフェリーで3時間ほど。人類生態学教室では、離島という地理的な特徴に着目し、小値賀の環境や暮らしと健康の関係を探索する研究に取り組んでいきます。アンケート調査および生体試料の採取は博士課程1年の関家紗愛さん、修士課程2年の李子陽さん、卒論生の森千香代さんとともに、私(修士課程2年・増田桃佳)が実際に現地に足を運んで行いました。その後、個別の聞き取り調査を私が実施しました。さまざまな視点から研究を行い、人類生態学教室ならではの発見ができればと思っています。また、調査の結果は参加者の皆さまに還元させていただきます。
研究テーマの一つである「人とのつながりと健康」についてご紹介します。2021年10月、予備調査で初めて小値賀に足を踏み入れた日のこと、宿の周りを散策していると、すれ違ったおばあさんに声をかけられ、柿を渡されました。ちょうどさっき採ってきたから、と。都会では道端で人に声をかけられることは少ないですし、ましてや食べ物を受け取ることなんて滅多にないので驚きました。島で過ごしていると、ここではこれが普通なのだということがすぐにわかりました。島の人はほとんど皆すれ違うと挨拶を交わし、車ですれ違うときでさえお互いに会釈していました。野菜や魚、手料理などのお裾分けが日常的に行われており、誰かにもらった食べ物を他の人に渡す「お裾分けのお裾分け」もよく行われていました。このように他者との接点が多く、物質のやり取りも多いことから、初めは小値賀では人と人とのつながりが強いのではないか、と思いました。しかし、島民の方々のお話を聞き、生活を観察させていただくうちに、一概にそうは言えないと次第に考えるようになりました。ほとんど全員が知り合いという環境だからこそ、他者との適度な距離感が重要になってくること。人とのつながりと健康の関連についての研究は多数ありますが、つながりが多くて強い方が健康に良い、という単純な話ではなさそうだということを肌で感じました。このような経緯から人とのつながりに関する聞き取り調査を行い、アンケート調査や生体試料の分析の結果との関連を解析することにしました。解析はこれから行うのですが、人とのつながりのあり方の本質に少しでも迫るような、何か面白い発見ができれば良いなと思っています。
(文責・写真:増田桃佳)
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