2019年度医療人類学実習

2019年7月6日から1泊2日で医療人類学実習がおこなわれました。参加した学生の1人にレポートを書いてもらいました。楽しく充実した雰囲気と熱い気持ちが伝わってきます。写真とともにご覧ください。


医療人類学実習を終えて~May the field be with you~

 7月6日に千葉県安房郡鋸南町勝山にて、フィールドワーク研修を実施しました。
本実習には11名の学生が参加し、医学部健康総合科学科はもちろん本学後期教養学部の学生や、人類生態学教室の博士課程の学生、さらには秋田大学の学生など、様々なバックグラウンドをもつ学生が集い、悪天候にも関わらず、大盛況のうちに終えることができました。
 例年通り、梅崎教授から、“面白い発見をしてきなさい”というシンプルなミッションだけを与えられたフィールドワーカー達は戸惑いながらも、くじ引きでチームを組み、外の世界へ一歩を踏み出しました。初対面にもかかわらず、臆することなくフィールドワークに赴く学生達の背中は、きっと教授陣の胸を打つものがあったことでしょう。

 夜になると、フィールドワークを終えた学生達が1日の成果を発表する段となります。例年とは違うタイトなスケジュールの中、各班オリジナリティーのある発表を繰り広げます。薬局に置かれた大量の毛染めと地域の美容室の少なさを結びつけて考察したグループ、街の喫茶店のおばあさんや牡蠣を採取しているおじいさんから高齢者の生業に関するエッセンスを引き出したグループ、移り行く時代に対して住民が各々の生業を通していかにして適応してきたのかを引き出したグループ、廃校をリデザインして観光地化している案件を探し出し地域の観光施策に想いを馳せたグループなど、各々がオリジナリティーあふれる発表を繰り広げる様相はフィールドワークならではの醍醐味で、参加者の皆様からは生きる喜びが滲み出ていました。
 フィールドワークは人類生態学の伝家の宝刀です。人類生態学という学問は、人びとが実際に生活している場において、行動を具体的に観察し把握することを出発点として発展してきた学問だからです。データ偏重社会が構築されそうな世の中の風潮が感じられますが、データ化されない人々の営みに根ざした科学も大切にできる、そんな人材が社会へ羽ばたいてくれることを切に願います。

 もしも人類生態学という学問に神様がいるのなら、彼はきっとこう仰ることでしょう。“May the field be with you〜フィールドとともにあれ〜”と。

 

地元の漁師さんから説明を受ける学生達。

 

実際に町へ出て町に溶け込む学生達。

 

坊主の毛の長さを測定する学生。