第94回日本衛生学会学術総会参加報告

第94回日本衛生学会学術総会で,教員・大学院生が研究発表を行いました.


助教の水野です.

2024年3月7–9日に鹿児島で開催された第94回日本衛生学会学術総会に参加してきましたので,その様子をお届けします.

教室からは私の他に,教員2名(小西祥子 准教授,Kyi Mar 助教,水野)と大学院生3名(Cindy Rahman Aisyah(D2),那賀裕朗(M1),愛甲達也(M1))が参加し,それぞれ研究発表を行いました.

それぞれの発表内容について,簡単にご紹介させていただきます.

小西祥子 准教授

  • 小西祥子,仮屋ふみ子.「日本の夫婦における結婚から第一子出生までの期間」
    夫婦をもたらすするために,からまでの期間を,をしている期間をせずのあるベビ期間することによって,検討した結果について報告しました.

Kyi Mar Wai 助教

  • Wai KM, Takehiro S, Cindy RA, Ihara K, Umezaki M. 「Epigenetic Modification, LINE-1 Methylation at Birth, and its effect on Heavy Metals-induced Telomere Shortening in Newborns.」
    重金属類への曝露とテロメア長の短縮との関連において,エピジェネティックな変化(DNAメチル化)の媒介因子としての可能性を検討した結果について報告しました.

水野佑紀 助教

  • 水野佑紀,Chirag J. Patel.「環境化学物質曝露と男性性機能のエクスポソームワイド関連解析」
    昨年の3–4月に滞在したHarvard Medical SchoolのDr. Patelとの共同研究の成果を報告しました.National Health and Nutrition Examination Survey(NHANES)のデータを用いた研究で,Exposome-Wide Association Study(ExWAS)という解析手法を用いて環境化学物質への曝露と男性性機能との関連の探索を実施しました.その結果から,多種多様な環境化学物質が男性性機能への影響を有している可能性が示唆されました.

Cindy Rahman Aisyah (D2)

  • Cindy Rahman Aisyah,小西祥子.「インドネシア人における配偶関係と死亡率の関連」
    I presented the association of marital status with mortality risk in the Indonesian population. Data are from the Indonesian Family Life Survey (IFLS), which began in 1993 and ended in 2015. I used IFLS wave 4 (2007/2008) and wave 5 (2014/2015). The result showed that there is a greater risk of mortality in the unmarried male compared to the married population. The life perspectives and marriage choices may explain this relationship.

那賀裕朗(M1)

  • 那賀裕朗,水野佑紀,増田桃佳,今井秀樹,梅﨑昌裕.「日本の農村漁村地域住民の尿中 Cd 濃度とその関 連要因の探索」
    健康影響が懸念される物質として依然として注目されているカドミウムの慢性曝露に注目し,カドミウム曝露の実態とその関連要因について検討した結果を発表しました.
    発表では,研究室のメンバーとサンプリングを行った長崎県小値賀町と石川県珠洲市のデータを使用しました.

愛甲達也(M1)

  • 愛甲達也,増田桃佳,後藤千穂,今井秀樹, 大西眞由美,梅崎 昌裕.「地方に居住する中高年者の食事性炎症指数は空間 クラスターを形成するか」
    食事による慢性炎症への影響が近年の報告で示唆されています.日本の4地域の食物摂取頻度のデータを分析した結果,食事の炎症性を示す食事性炎症指数が,島原半島で空間クラスターを形成していることがわかりました.また,クラスター間で個人属性や栄養素の摂取量に違いがあることもわかりました.

ここからは,発表の様子を写真付きでお届けします.

発表の様子①:Cindy(D2)

こちらはD2のCindyです.Cindyは,2年前にも日本衛生学会に参加したことがあり,今回が2回目の参加でしたが,2年前はコロナの影響で完全オンライン開催だったので,対面での参加は初めてでした.Cindyに学会を終えての感想を聞いてみたので,紹介いたします.
“It has been two years since I participated in JSH. I didn’t expect that many people would be interested in my research. In the end, I got comments about family life situations that may involve the influence association of marital status and mortality risk in Indonesia. I hope to do a deeper analysis from the perspective of Indonesian population life to answer why the association between marital status and mortality risk occurs.”
Cindyの発表は私自身の発表と時間が重なってしまい,見に行くことができず残念でしたが,博士課程の学生として堂々と発表に取り組めていたものと思います.これから博士論文を執筆していくCindyにとって,今回の発表で参加者から様々な質問やコメントが得られた良い機会になったのではないでしょうか.

発表の様子②:那賀(M1)

こちらはM1の那賀君です.腸内細菌叢の個人差を決定する環境要因に興味を持ち,研究に取り組んでいます.今回の発表では腸内細菌叢に直接的に関わる内容ではありませんが,カドミウムへの曝露も腸内細菌叢に影響を与える可能性のある環境要因として着目し,まずはその環境要因について評価した取り組みの発表となりました.那賀君は今回が初めての学会参加で,感想を聞いてみたところ,「初の学会で緊張しましたが,発表後に先生方からたくさん質問とアドバイスをいただき,非常に良い経験になりました.今度はもっと背筋を伸ばして発表がしたいです.」とのことでした.
本人は緊張していたようですが,練習の成果を存分に発揮し,落ち着いて発表に取り組んでいました.また,会場からたくさんの質問やコメントをもらい,1つ1つ丁寧に堂々と回答している姿は頼もしい限りでした.

発表の様子③:愛甲(M1)

続いては,こちらもM1の愛甲君です.愛甲君は,GIS(地理情報システム)を活用した研究に専門的に取り組み,今回はDIIという食事の炎症性を評価する指標について,日本の地方の住民においてDIIが高い・低いクラスターが形成されているかという点に着目した検討の結果について報告しました.愛甲君も那賀君と同じく初めての学会発表でしたので,その感想を聞いてみましたが,「学会の参加は初でしたが,滞りなく発表することができてよかったです.質問をもらったほか,他の発表やポスターも見ることができ貴重な経験になりました.」とのことでした.
発表も質疑応答も落ち着いて丁寧に取り組めていたので,発表練習に取り組んだ成果を発揮できていたと思います.また,愛甲君は実際に長崎に行ってフィールドワークを実施しましたが,質疑応答ではその経験が活かされた場面もありました.実験・解析系の研究に主に取り組む人もフィールドワークに行くという人類生態学教室の特徴が活きた場面だったかなと思います.素晴らしい発表でした.
M1の2人にとって初めての学会発表でしたが,それぞれいろんなことを学べる良い機会になったかなと思います.日本衛生学会はもちろんですが,より自分の専門分野に近い学会など,これから積極的に参加してもらえればと思います.おつかれさまでした!

 

 

私自身は,これまでの学会はなぜか人類生態からの参加者は私だけという単独参戦ばかりでした.今回の日本衛生学会では教室からもたくさんのメンバーが参加し,現地には教室の卒業生など関係者が多数いて,以前の所属先の関係者や共同研究者のみなさんにもお会いすることができ,非常に実りある学会参加となりました.

人類生態学教室では,さまざまな研究が進められていますが,それぞれのメンバーがそれぞれの専門性を持って研究に取り組んでいます.そのため,学会に参加する場合は個々にそれぞれの専門分野の学会で発表する場合が多いです.しかし,日本衛生学会のようなヒトの健康と環境に関する幅広い研究発表が行われる場では,教室所属の教員・学生,さらには卒業生などの関係者が一堂に会することもあります.
参加したみなさんがそれぞれ素晴らしい発表をしてくれたおかげで,日本衛生学会,そして環境保健学分野での「人類生態学」の存在をアピールできたと,勝手ながら思っております。

(文責:水野佑紀 助教)